12 2歯の人工乳頭成長
抜けた歯の治療に適した矯正治療と虫歯治療
歯が抜けた部分は、通常、義歯か、ブリッジか、インプラントで治療することになりますが、たまたま、矯正治療を受けるタイミングと重なれば、インプラントもせずに、かつ、矯正治療にとっても、進めやすい場合があります。
左上の歯が、1本抜歯になり、しばらく、仮の歯をくっつけておられた患者様が、矯正治療を希望して来院されました。
検査で、上あごが出っ歯になっていること、下の歯並びもガタガタしていること、などから、抜歯矯正が適応と判断され、ちょうど抜けたままになっているスペースを使って、矯正治療をすれば、インプラントなどの治療もしなくて治療が進められる診断結果になりました。
また、歯と歯の間の虫歯も術前のレントゲンで確認されていたため、丁度いいタイミングで、横から、虫歯治療ができ、歯をなるべく削らずに治療することもできました。
矯正治療の術後
スマイルラインと歯の色を考慮したインプラント治療
前歯のブリッジの審美性が気になり来院されました。
レントゲンで、歯周病の問題や心配はない反面、虫歯の治療も必要でした。
前歯のブリッジがつながっているため、患者様の若い年齢も考慮し、治療の審美性だけでなく、将来的にメンテナンスやお手入れがしやすく、再治療も容易な方法として、メリット、デメリットを考え、インプラントを取り入れて治療することになりました。
審美性と、かみ合わせ、残っており骨の状態もきちんと調べ治療に取り掛かりました。
ブリッジを外し、天然の歯の部分の虫歯治療をきちんと行い、インプラントの治療も行いました。
仮の歯ので、スマイルラインや、かみ合わせをチェックします。
ほかの虫歯もきちんと治療するだけでなく、奥歯は、前歯のかみ合わせの支えのための重要な関係があります。
一旦、治療を終了しましたが、患者様から、前歯の色が、1本気になるとのことで再治療することになりました。
黒い部分は、治療前の着色部分で、虫歯ではないという理由と、歯の神経を守るために、削らずにおいていましたが、セラミックの歯の色に、透けて影響するため、なるべく、歯の神経を傷つけないように、慎重に、着色を取り除き、その部分を白くカバーし、再度セラミックの差し歯(セラミッククラウン)の治療をやり直しました。
ブリッジのやり変えのためのインプラント
欠けてしまった、前歯のブリッジのやり変えを希望して来院されました。
ブリッジの再治療をするにあたり、全部がつながっているため、
- やり変えが大掛かりになる。
- ブリッジを支える歯が虫歯や歯周病でボロボロになっており、ブリッジのやり変えではなく、入れ歯かインプラントの支えも必要になってくる可能性がある。
- 残せる歯を、なるべく抜かずに再生させる必要がある。
これらを考慮して、治療を進める必要があるため、十分な検査を行い、治療の診断、計画を立て、治療を行いました。
治療としては、
- なるべく歯を抜かずに残す
- 虫歯と歯周病とかみ合わせをきちんと治す
- 将来、今回の治療のきっかけのように、歯のどこかにトラブルが生じた場合、その部分だけ簡単に治療やリカバーなどのトラブル解決ができるようにしておく。
以上の点を含めて治療を行いました。
上下のブリッジを外し、腐ってしまって、残せない歯以外は、すべて、なるべく抜かずに残し、虫歯や、歯周病をきちんと治療し、さらに、それらの歯が、治療後、長く健康な状態に保てるよう、歯が、もともと無かった部分と腐ってしまっていた部分にのみ、にインプラントを入れ、治療を終えました。
治療は、1本づつの歯になっているため、日々のお手入れもしやすく、万が一、どこかの歯が悪くなっても、その部分だけ治療すればいいだけのメンテナンスがしやすい状態にして完了しました。
歯を削らないインプラント
前歯が抜けてしまった歯の治療の選択として、ブリッジ、インプラント、一本の入れ歯、何もしない、などの方法があげられますが、個々の状況によって、治療方法の選択の優先順位は、治療方法のメリット、デメリットの面からだけでなく、その状況の面からのメリット、デメリット、また、患者様の事情の面からのメリット、デメリットなど、総合的に判断し、専門家と相談して治療を受けることが望ましいと思います。
写真のような状況の場合は、インプラント、ブリッジという順番に選択するのが、専門的に勧められる治療だと思います。
このような場合のインプラントの治療のメリットは、両方の歯を削らすに済むことが大きくあげられ、また、ブリッジの場合、審美的な問題が起きやすいことが挙げられます。
また、すでにしておられる部分入れ歯をする場合は、例え1本の歯の部分の欠損であっても、全体の歯列を覆ったり、取り囲むぐらいの大きさが、装着の不快感があっても、必要です。
それは、歯に引っ掛ける形状の部分入れ歯を飲み込むリスクが非常に高いことがその理由です。
そのため、もし、1本の義歯(1本入れ歯、1本義歯)を作成する場合は、そのリスクを回避した形態のものが必要です。
インプラントで前歯の治療を行いました。
抜歯と同時のインプラント治療のメリット
通常、抜歯した部分の顎の骨は、病巣や傷口が一旦治癒する際に、骨が再生しますが、その、再生治癒の過程で、骨があまり吸収せずに回復する場合と、骨が吸収したように痩せて、回復する場合があります。
多くの場合、抜歯のタイミングがよければ、前者のように、骨があまり吸収せずに回復させることができますが、抜歯の診断のタイミングをのがしたり、抜歯の方法の違いで、後者のように、骨が著しく吸収してしまい、その後の義歯の安定や、インプラント治療の適応に多くの弊害が出てしまうことがあります。
また、一旦、上記前者のような、適切な治療をしたのちも、きちんとした、安定した義歯や、インプラントからの噛む力や刺激がなければ、廃用性の萎縮が骨に起きて、経年的に、顎の骨が、退縮してしまうことがあります。
そのため、適切な診断に合致すれば、保存不可能な歯の抜歯と同時のインプラントは、非常にメリットが大きい治療になります。
他の歯科医からの紹介で、外れた差し歯の部分を、なるべく歯がない状態の期間がない状態でインプラントにしたいという希望の患者さんが来院されました。
2016.1.7 初診時
2016.1.7 初診時
2016.1.7 初診時
初診時、歯根の破折や、歯根に及ぶ虫歯があり、確かに、無理に差し歯にしても、予後があまりよくないと思われる点と、患者様が、どうしても、一旦歯を抜かずに、なるべく残してほしいという治療の選択しかできないということがない点から、予後のメリットデメリットも考え、インプラントによる治療選択が適切と判断し、治療をすることになりました。
2016.1.14 1回目治療
破折した、歯根を抜去
抜歯中の出血と骨のダメージを押せえると同時に、抜歯後の骨の吸収も抑えられるよう配慮し、同時にインプラント治療を行い
すぐに仮歯を装着し、ほぼ無出血に治療が完了。処置時間も、約30分程度。
術直後のレントゲン確認
2016.1.15 2回目 治療翌日の術後経過確認とレーザー照射
2016.2.19 3回目 セラミッククラウンの型どり
2016.2.19 3回目 セラミッククラウンの型どり
2016.2.22 4回目 セラミッククラウンの装着とかみ合わせチェック
2016.2.22 4回目 セラミッククラウンの装着とかみ合わせチェック
2016.6.30 5回目 定期健診時
インプラントの周りの骨と歯ぐき(歯周組織)が回復し、安定している。
このように、当院のインプラント治療の特徴としては、出血や腫れ、痛み、手術負担を最小限にし、かつ、より難しい技術が必要な、抜歯同時インプラント治療と、更に、その場での仮歯の装着で、治療時も、治療後も、より深い感が少なく、また周囲の方にもあまり気づかれずに、日常生活に戻ることができます。
歯科用レーザーについて
レーザーとは
レーザーとは、英語で、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
Light:光
Amplification by:増幅
Stimulated:誘導
Emission of:放出
Radiation:放射
の頭文字を省略してLASERと呼ばれます。
レーザーの歴史
レーザーは1917年のアインシュタイン博士の誘導放出現象に関する論文が最初とされ、1960年にアメリカのメイマン博士がルビー結晶を共振器として、ルビーレーザーの開発に成功し、その翌年には、ジャバン博士がヘリウムネオンから人工光を発振させるHe-Neレーザーを開発し、その後、半導体レーザーや、炭酸ガスレーザー、Nd:YAGレーザーやEr:YAGレーザーなどが、1960年代から70年代にかけ次々と開発されていきました。
その後、それぞれの特徴を持ったレーザーの基礎研究、臨床応用が進み、現在の日常診療に用いられるようになりました。
レーザーの一般的な種類および特徴
レーザーの種類は媒質による分類、波長による分類、組織透過性による分類、出力による分類がある。
- 媒質による分類
媒質による分類は、気体、液体、固体、の3つに分けられます。
- 気体:CO2レーザー、エキシマレーザー
- 液体:色素レーザー
- 固体:ルビーレーザー、Nd:YAGレーザー、Er:YAGレーザー、半導体レーザー
- 波長による分類
波長による分類では、主に、紫外線領域から中、遠赤外線領域の間で分類される
- 紫外線領域:エキシマレーザー(0.308μm)
- 可視光線領域:アルゴンレーザー(0.488μm)、He-Neレーザー
- 近赤外線領域:半導体レーザー(0.7~0.9μm)、Nd:YAGレーザー
- 中、遠赤外線領域:Er:YAGレーザー(2.94μm)
- 組織透過性による分類
水分への吸収性が高いものと低いもので、表面吸収性レーザーと組織透過性レーザーに分類される。
- 表面吸収性レーザー(炭酸ガスレーザー、Er:YAGレーザー)
- 組織透過性レーザー(Nd:YAGレーザー、半導体レーザー)
- 出力による分類
レーザーの出力で、ハードレーザーまたは高出力レーザーと、ソフトレーザーまたは低出力レーザーに分類される。
- ハードレーザー(高出力レーザー):切開、凝固、切削等の処置
- ソフトレーザー(低出力レーザー):疼痛緩和、治癒促進
レーザーの作用と効果
レーザーの作用には、歯科領域では、歯や骨などの硬組織と、歯肉、粘膜などの軟組織に対する作用と疼痛のコントロールに対する作用などを各レザーの特徴と出力コントロールを合わせ使い分けその効果を得る。
歯科用レーザーの種類および特徴
- ルビーレーザー(波長:0.6943μm)
歯科用レーザーの先駆けのレーザー
- 炭酸ガスレーザー(波長:10.6μm)
水分の吸収性が高く、軟組織の切開に向く
- Nd:YAGレーザー(波長:1.064μm)
- Er:YAGレーザー(波長:2.94μm)
水分の吸収性が炭酸ガスレーザーの10倍近いため、エナメル質、象牙質などの硬組織の切削に向き、同時に熱エネルギーによる発熱の影響を抑えることができる。軟組織の切開では止血しにくい反面、創部の治癒は良い。
- 半導体レーザー(波長:0.79~0.89μm)
半導体を利用して、効率よく発光できるため、小型である。臨床応用当初はソフトレーザー(低出力レーザー)として用いられていたが、高出力の機器の登場により、口内炎や、知覚過敏などの、消炎、鎮痛処置から、軟組織の切開や止血など幅広く用いることができる。
止血効果に対しては、水分の吸収性は低いが、ヘモグロビンやメラニンなどの色素への吸収が高いため効果が得やすい。
また、他のレーザーに対し、組織透過性が高く、歯周病治療(歯槽膿漏治療)などにも効果的に応用される。
レーザーの安全性
歯科用レーザーは、治療に対する高い効果と、薬剤などと比較しての副作用がほとんどないといった利点がある反面、その取扱いと管理には厳重な注意が必要である。
歯科用レザー機器には、何重もの安全装置(本体キースイッチ、ピンコード入力、緊急停止ボタン、フットスイッチロックなど)がついてる。
歯科用レーザー機器の使用時に眼の保護には特に留意しなければならない。
歯科用レーザーは主に、紫外線領域から中、遠赤外線領域の間で分類されるあるが、目に対しては、網膜熱傷、白内障などの偶発症を引き起こすため、必ずその波長に合った保護メガネを術者、患者双方が装着して、治療を行う。
これらをきちんと守りながら治療を行えば、歯科用レーザーは、治療に対する高い効果と、薬剤などと比較しての副作用がほとんどない、痛みが少なく、痛みの緩和を同時に行いながら、治癒の促進が期待できる、といった多くの利点があり、従来の電気メスなどではできない治療を可能にしたり、また、レーザーでしかできない治療法も登場し非常に効果的な最新治療機器です。
上顎洞に迷入したインプラントの摘出
インプラント治療のトラブル、偶発症の一つに、インプラントが上顎洞(副鼻腔)に迷入し、上顎洞炎(蓄膿)を引き起こすことが挙げられます。
レントゲンの写真は、他医からの紹介で来院された患者様です。
初診時、インプラント周囲炎、歯周病、インプラントの上顎洞迷入の問題がありました。
上顎洞に迷入したインプラントは、そのインプラントの摘出術と、上顎洞炎(副鼻腔炎、蓄膿)を治癒させる必要があります。
治療方法として、インプラント周囲炎、歯周病の治療と、インプラントの再治療による咀嚼機能の回復、それから、上顎洞迷入のインプラントの摘出が必要になります。
当院でのインプラントの再治療と上顎洞迷入のインプラントの位置関係です。
インプラントの再治療と、インプラント摘出の術前のレントゲン
インプラント摘出の術直後のレントゲン
摘出したインプラント
最小限の手術侵襲(体の負担)で、腫れや出血がほとんどありません。
手術はわずか5分で終了しますが、一般の歯科医ではできない手術になります。
また、口腔外科が行える病院でも、このような最小限の手術をすることは、CTによる綿密な検査と、特殊な治療法を用いることが必要です。
当院では、このように、インプラントの失敗や、予後の不良な状態も、きちんとリカバーできる治療法で安心して、インプラントの治療による快適な咀嚼機能と審美性の回復という、インプラント治療のメリットを享受できる治療が受けられます。