抜歯、歯根手術などの外科治療を回避するための根管治療

他の歯科医で歯の根の問題を指摘され、来院されました。

初診時の口腔内や、自覚症状はみられませんでしたが、レントゲン像、特にCT像で鼻腔直下まで大きくなりかけている歯根嚢胞が認められました。

このような場合、通常、抜歯による治療が適応になると考えられますが、歯を抜かずに残したい場合は、歯根嚢胞を摘出する手術が選択されます。

しかしながら、この状態の場合、歯根嚢胞の摘出術を行っても、ブリッジの中の虫歯が進行しすぎて、一本歯が抜けている場所と同じ状態になっており、少なくとも、前歯6本は近いうちに抜け落ちてしまうことが考えられます。

そのため、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、レーザー治療、審美治療を併用して、歯を抜かずに、歯根嚢胞を治癒させ、さらに、前歯を審美的に健康に回復させる治療を行いました。

取り急ぎ、歯が抜けたままにならないようにしながら、基礎治療が勧めるよう仮歯を装着します。

そのあと、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、レーザー治療を行います。

次のアポイントで、傷が回復したことを確認しながら、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、レーザー治療を続けます。

 

 

次のアポイントでも、全体の回復を確認しながら、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、レーザー治療を続けます。この時点で、差し歯の歯ぐきの黒ずみもほぼ消失し、きれいにピンク色に回復してきます。

根の内部の基礎治療をきちんと行いながら、虫歯治療、根管治療、歯周病治療、レーザー治療で歯を回復させます。

 

基礎治療がきちんと終えたところで、レーザーによる、歯周組織と、審美治療を行います。

 

 

 

最終の歯を入れる前に、CTで治癒の状態を確認します。

 

 

鼻(鼻腔)下の穴(歯根嚢胞)が消失し、骨が再生しました。

 

歯科用レーザー治療を併用、応用した根管治療

根管治療の再治療の場合、多くは、その歯の歯根(歯の根っこ、歯の根管)に問題を抱えているだけでなく、その歯の内部(虫歯と、壊死歯髄の残存)と、歯を支える歯周組織(歯槽骨、歯肉、歯肉溝、歯周ポケット)などにも問題を抱えており、そのすべての問題を解決しなければ、根管治療(歯の神経の治療、歯の根っこの治療、歯内療法)を成功させることは難しくなります。

 

内部の虫歯と壊死、感染歯髄組織を取り除くと同時に、歯の内部、根っこと、歯の周囲歯肉組織を歯科用レーザーで治療します。

 

そのあとは、すぐに、仮歯を装着し、歯の内部と周囲の組織の回復を待ちます。

次のアポイントで、根管治療のための歯の周囲組織が回復したら、再度、根管治療で、歯の根っこの先の根尖組織を回復するために、再度歯の根管部分(歯の根っこの部分)の壊死、感染歯髄組織を取り除く治療を行います。

 

次のアポイントで、歯の失われた部分(セメント質、象牙質部分)を修復し、クラウン(人工ナメル質部分)を修復し健康な歯を取り戻します。

 

根管治療による蓄膿(歯性上顎洞炎)の治療

歯の根の治療(根管治療、歯内療法)を長期間受けていたが、症状が改善せず、当院にて、根管治療を希望して来院。

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2015年12月10日 初診時レントゲン

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2015年12月10日初診時口腔内

 

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2015年12月10日 初診時CTにて、右上顎洞(右の副鼻腔)に不透過像がみられ、炎症症状が拡大していることがわかった。

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前後面のスライスCT画像

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左右面のスライスCT画像

 

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2015年12月22日 当クリニックにて根管治療の再治療開始

 

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2016年1月22日 根管治療の術直後確認レントゲン(根管治療3回目のアポイント時)

 

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2016年2月5日 術後経過確認時のCT画像

右側の上顎洞の炎症(粘膜の肥厚)が消失し、自覚症状も消失した。

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左右面のスライスCT画像

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前後面のスライスCT画像

 

このように、蓄膿(上顎洞炎)の治療には、歯が原因の歯性上顎洞炎と、鼻が原因の鼻性上顎洞炎との鑑別診断が重要で、更に、その症状が、歯が原因の歯性上顎洞炎の場合、適切な、根管治療と、根管治療と抗菌剤の投薬、抗菌剤の投薬のみ、などの適切な治療法の選択で治療することが可能です。

外科的根管治療(歯根端切除術)とは

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(イメージ図は治療説明ソフト Consuit-PROより)

■なぜ、歯根端切除術(外科的根管治療、外科的歯内療法)が必要なの?

歯根端切除はいろんな場合の歯を残す事ができます。

→手術は診断にも役立ちます。もしレントゲンでは異常がないのに症状が治まらないというので あれば、歯根が割れてるのかもしれません。あるいは、歯内療法の時に完全に根管が見つけられなかったのかもしれません。こんなときは、手術によって問題を発見し治療します。

→時々根管がふさがっているため、根管がきれいにできなかったり、道具が届かなかったりすることがあります。こういう場合は、手術によって歯の根元の先をきれいにします。

→歯内療法を受けた歯は非常に長持ちするでしょう。しかしながら、治療を受けた歯の中には治 癒しない場合があります。そういったケースでは治療が成功したあと数年たってから痛みが出 たり、おかしくなることがあります。こんなときこそ、歯根端切除で歯を残せるのです。

→手術は感染した根元やその周りの骨に対しておこなわれます。    歯を残すための外科的処置には多くの種類がありますが、ほとんどの場合、歯根尖切除と呼ばれるものが行われます。歯内療法をしたあとでも根尖付近に炎症や感染が続く場合は、この方法が最適な治療であることが臨床において多くみられます。

■歯根端切除とは何?

この処置は根尖付近の骨に穴を開けるために歯ぐきをめくり、炎症や感染した組織を取り除きます。その時、根元の先もわずかに取り除きます。そして、根元の先をふさぐために、そこにつめものをします。1カ月後にはそこに骨ができてきます。

■この処置は痛いですか。    局所麻酔を用いますので、ほとんど痛みはありません。もちろん術後傷が治るまで少し腫れたり、違和感があるかもしれません。でもこれは他の外科的処置と同じ普通の事です。術後は痛み止めを処方していますのでそれを飲めばほとんど問題ありません。

■歯根端切除を選ぶ理由は?

日常臨床において、よく歯の保存のための治療が難しい場合すぐに抜歯されることがあります。しかし抜歯した場合、そこは咀嚼機能を回復したり歯のない状態になってしまします。そこで、この、根管治療の再治療が不可能な歯でも、歯を抜かずに残すチャンスとして、この治療法を用いることが有効になることがありからです。